19世紀末に生まれた斬新なデザインの指輪。
- 商品番号 / R4082X
- 年 代 / 年19世末頃
- 国 名 / イギリス
- サ イ ズ / フェイスの縦幅:18.5mm フェイスの横幅:12.5mm 厚さ:4.5mm 18号(サイズ直し無料)
- 素 材 / エメラルド、ダイアモンド、18金
エメラルドを使ったアンティークのリングはルビーやサファイア、ガーネットなどの他の色石を使用したリングに比べ、遥かに少ないです。
私の経験では上記の宝石のリングが50~70個あれば1個あるかないか。そのくらいにエメラルドを使用した指輪は出会う機会が少ないです。もちろん、時代に拘らなければ、イギリスやフランスなどのマーケットでももっと多くのエメラルドのリングが並んでいます。そうした物の多くはセカンドハンドと呼ばれる20,30年くらい前の時代の若い物です。
恐らく、イギリスはルビーやサファイアの主要な産地であるミャンマーやスリランカを植民地にしていたため、多くのそうした宝石を輸入したのでしょう。それに対し、エメラルドの主要な産地であったコロンビアはスペインの植民地であったこともあり、歴史的にイギリスとの繋がりは深くありませんでした。アフガニスタンやインドなどでもエメラルドは産出されていましたが、産出量や品質はやはりコロンビアに比べ劣っていました。
こうした背景もあり、アンティークジュエリーでは他の宝石に比べエメラルドは市場で目にすることが少ないのでしょう。大振りな逸品であればスペインを経由し西ヨーロッパにも広まっていたので、博物館などは展示されていますが、19世紀から20世紀初頭の使い易いリング等では絶対数が少ないと言えます。
そうした中、手に入った珍しいデザインのリングです。直線的で菱形を伸ばしたようなデザイナは人差し指や薬指によく合います。19世紀のローズカットを施されたダイアモンドはガードルが丸ではなく、不均一です。それは原石の形を生かし、カットロスが少なくするため、それぞれの石の形に合わせてカットされているためです。
こうした一つ一つの石の形が異なる物をセットするには台座もそれに合わせて手作りしなければならず、キャストワークのような現在の台座には合っていません。このリングのフェイスを見てもそれぞれに石の形、大きさ合うように金に穴を開け、起こした爪で石を留めています。ショルダー部分も同様に小さなローズカットのダイヤに合わせて穴が開けられ、石の周囲を囲むように爪と薄い覆輪で留めています。フェイスの裏側を見ても、ハンドカットで丁寧に開けられ、光が通るように作られていることが分かります。
フェイスとショルダーの周囲を見ると小さなミル打ちが連続して施されています。摩耗により上下に少しミルが消えかけているところもありますが、こうしたミル打ちで時代判別の参考にもなります。
フェイスの角に配置されたエメラルドにより、ローズカットのダイヤだけでは感じられない存在感と清々しさが指輪に備わっています。
エメラルドの鮮やかな色のアクセントとローズカットのダイヤの渋い輝きが融合した希少なリングです。